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糖尿病とは

監修:横浜市立大学 内分泌・糖尿病内科学 教授 寺内 康夫 先生

糖尿病の発症メカニズム ① なぜ、 糖尿病では血糖値が高い状態が続くの?


糖尿病にはいくつかタイプがありますが、最も多いのは2型糖尿病です。2型糖尿病の発症には過食や運動不足といった生活習慣も関係するので、正しい生活習慣を身につけ、実行することが2型糖尿病の予防ではとても大切です。

参考:日本糖尿病学会 編・著: 患者さんとその家族のための糖尿病治療の手びき改訂第58版, p.16,18-19, 南江堂 2020

なぜ、 糖尿病では血糖値が高い状態が続くの? – 血糖値を一定範囲内に保つメカニズム-

インスリンとグルカゴンの働き

糖(グルコース)は体にとって重要なエネルギー源の一つで、血液中のグルコースの濃度(血糖値)はインスリンやグルカゴンといったホルモンの働きによって調節されています。このうち、インスリンは血液中のグルコースを取り込むようにさまざまな細胞に働きかけ、その結果、血糖値を下げる働きがあります。一方、グルカゴンは、肝臓でグリコーゲンとして蓄えられたグルコースを血液中に放出するよう働きかけ、その結果、血糖値を上昇させる働きがあります。
インスリンやグルカゴンは1日を通じて分泌されており、食間や夜間は2つのホルモンのバランスにより血糖値は一定範囲内に保たれています。食事によりグルコースが体に取り込まれると、血糖値は上昇しますが、インスリンの分泌量が増え、血糖値は速やかに元の状態に戻ります。通常では、このようなメカニズムで血糖値は常に一定範囲内に保たれています。しかし、糖尿病になると、血糖値を一定範囲内に保つメカニズムが働きにくくなるため、血糖値の高い状態が常に続くようになります。

参考:医療情報科学研究所 編.病気がみえる vol. 3 糖尿病・代謝・内分泌 第5版. メディックメディア, 2019: 5.

インスリンとグルカゴンの分泌パターンの図
インスリンとグルカゴンの分泌パターンの図

正常の場合
・食事に伴う糖の流入によって、インスリン分泌が促進される
・一方、グルカゴン分泌は抑制される
・インスリン増加とグルカゴン減少により、食後上昇した血糖値は速やかに戻る

2型糖尿病の場合
・2型糖尿病では、食後血糖が上昇してもインスリン分泌が遅れ、また分泌量も少ない
・グルカゴンは、食後の血糖上昇があるにもかかわらず、分泌が亢進する
・このため、食後の高血糖が引き起こされる

※健常者では食後のグルカゴン分泌は食事の組織によって反応性に差があるが、抑制される傾向にある
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医療情報科学研究所 編.病気がみえる vol. 3 糖尿病・代謝・内分泌 第5版. メディックメディア, 2019: 11.

インスリン

すい臓から分泌され、血液によって全身の組織に運ばれます。そして、血液中の糖を筋肉や肝臓・脂肪細胞に取り込ませるため、血糖値を下げる働きがあります。

グルカゴン

インスリンとは逆に、肝臓でグリコーゲンとして蓄えられた糖を血液中に放出するよう働きかけ、その結果、血糖値を上昇させます。